Strategy

事業戦略・中長期経営方針

当社を取り巻く事業環境

日本社会全体の労働人口減少とそれに伴う採用競争の激化を受けて、賃金水準は上昇し続け、人材の確保は年々厳しさを増しております。
この影響は人材派遣業界にも及んでいます。求職者の選択肢が増える中、派遣スタッフを確保するためには賃金を上げ続ける必要があることに加え、求人募集費も高まり続けています。
その結果、派遣会社の利益率は強く圧迫されており、大手の中でも赤字になる会社が出てきています。
将来的な人手不足も相まって、このような現象が加速すれば、日本型の人材派遣モデルは成立しなくなっていくのではないかと考えています。
同業他社において、人材紹介や業務受託、求人広告等、派遣以外の事業に活路を見出そうとする動きが見られるのも、その予兆であると捉えています。

CRO業界も、従来のビジネスモデルのままでは安泰とはいえません。
受託した業務を人の手で処理する構造である以上、賃金水準の上昇は利益率に対する圧迫要因になります。
加えて、生成AI等の技術進化により、定型業務の自動化が進む可能性は高く、アウトソーシングに依存する業務運用の見直しが予想されます。そのため、業界全体としても、提供価値の再定義と事業構造の変革が求められています。

こうした考えから、当社は以下の戦略に基づいて事業を展開しています。

中長期戦略

人材派遣会社としての価値を極限まで高める

当社は理学系技術者・研究者の人材派遣を専門としていますので、一般的な職種を扱う派遣会社に比べ、比較的高い利益率を維持しております。
この強みを活かし、中期的には派遣スタッフの報酬アップを継続することに加え、「転勤を伴わない正社員型派遣」の取組みと、営業体制の強化によって求職者のニーズにあった仕事をより多く取り揃えることで、新規の求職者から選ばれる割合を高めるとともに、当社から就業している派遣スタッフの契約が終了した際にも、速やかに次の派遣先を提供できるよう対応力を高め、継続就業につなげます。
また、複数の派遣会社に対して一斉に派遣サービスを発注でき、契約締結後の勤怠や請求等も一元管理できる派遣サービスプラットフォーム「ドコ1」を、2025年5月に公開しました。
ドコ1を足がかりに新たなお客様とのお取引を開始し、派遣のご注文を頂ける関係を築くという、顧客獲得の方法にも取り組んでいきます。

長期的には、「求職者と派遣先の仲介」と「就業中の支援」という、派遣会社の2つの価値を極限まで高めていきます。
当社はすでにこの両方に、他社にはない強みを持っていますが、今後さらにプラットフォームを進化させることで極限まで自動化を進め、仲介コストを削減して派遣スタッフの報酬を高め続けるとともに、就業中の丁寧なフォローをさらに磨いていくことで、市場環境の厳しさがさらに増し、他社が新たな事業に転換せざるを得なくなったとしても、当社は派遣会社としてお客様と派遣スタッフから支持されることで事業を継続します。
そうなれば、現在のような激しい競合状態は解消され、高利益率を確保できる新たなビジネスモデルの構築も可能であると考えています。

プラットフォーム運営会社への転身

当社は2016年以降、「プラットフォーム運営会社」を目指して様々な取組みを行い、その成果として、派遣サービスをデジタル化するプラットフォーム「doconico」と「ドコ1」、CROサービスをデジタル化するプラットフォーム「CoCoPos」を世に送り出しました。
次に目指すのは、派遣以外の新しいサービスを提供するプラットフォームです。
ここ数年、doconicoとドコ1の開発および運営を通じて、当社はプラットフォーム運営会社としてのノウハウを積み重ねてきました。この経験と実績を活かし、数年後のサービス開始を目指して、開発に取り組んでいます。

CRO事業

CRO事業では、安全性情報管理、ドキュメント支援、PMS支援、臨床研究支援の4領域を基盤とし、製薬企業のニーズや市場の変化に即応できる柔軟な体制を構築しています。中長期的には、生成AIや自動化技術の進歩により、人手による定型作業は急速に代替される見通しです。当社はこの構造変化に正面から向き合い、プロセスの自動化・標準化に加え、業務の安定性と効率性を両立するセンター運営の強化を、引き続き推進します。その上で、業務における判断やお客様対応、品質の担保、マルチタスク対応といった、人が担うべき実務価値領域に資源を集中させ、AIと共存する新たなCROモデルを確立します。 ドキュメント支援やPMS支援、臨床研究支援では、業務の標準化やツールの導入、プロセスのデジタル化を進め、再現性と生産性の向上を図ります。
今後、国内で需要が見込まれる高度な医療機器分野においては、開発から申請、市販後までをカバーする一貫支援体制を基盤とし、そこにデジタル技術とデータの活用を組み込んでいきます。海外グループ会社とも連携し、国内外における事業展開を多面的に支援できる体制へと進化させていきます。
さらに中長期では、医療・医薬関連領域において、新たな事業の創出に取り組みます。既存のサービスでは対応が難しい、より細分化された実務課題に対して、現場の実態に即した支援モデルをデジタルと融合させて構築し、特定領域における高い専門性と収益性を両立する、新たな価値の提供を目指します。
中期的には、プラットフォームとAIを活用して業務の効率化を進め、社員の待遇改善を実現しながら、短期的な利益への影響を最低限に押さえつつ、事業の拡大を図ります。また、海外のCRO事業では利益率の低さが課題でしたが、2025年2月に不採算事業を売却する等して収益性の改善に取り組んでいます。
中長期経営方針では、上記の内容に関する、より詳細な内容をご覧いただけます。